「今日、十環の家に行ってきたよ」


「どうだって?
 桃ちゃんと、上手くいってるって?」


「ああ。
 十環の奴、
 桃ちゃんにはまりまくっててさ。

 この前、桃ちゃんを家に呼んで
 十環の家族とお花見をしたんだって」



「そうなんだね。
 十環先輩のお母さんたちと
 話してる桃ちゃんって、
 想像できないな~」



 俺の背中に
 ピタッと顔をくっつけたままの六花。


 顔は見えないけど
 声が弾んでいる。


 よし! 

 今のところいい感じ!!


「花見の時にな、十環の奴
 桃ちゃんにシュシュを渡したらしいぞ」


「ひゃ~~!
 あの手作りシュシュを
 桃ちゃんにあげたんだね。

 十環先輩、
 失敗作のシュシュを大量に持って
 切羽詰まった顔でこの家に来たもんね。

 いっくんに
 シュシュの作り方を教えて欲しいって」



「ああ」


「あんな余裕のない十環先輩を見たの
 私、初めてだったかも」


「あいつ、
 いつも優雅に王子様スマイルを
 振りまいてるもんな」



 六花は俺の背中から顔を離すと
 俺の前に回って来た。