「これ……
本当に十環先輩が作ったんですか?」
「そうだよ。
さっき桃ちゃんに渡した
紙袋に入っていたものは、試作。
本通りに作ったつもりなのに
裏返しても
ぜんぜんシュシュっぽくならなくて。
母さんにもらった布
大量にゴミにしちゃった」
春の穏やかな日差しのように
柔らかく微笑んだ十環先輩。
私にシュシュをあげるために
こんなにもたくさん
試作品を作ってくれていたことが
嬉しくてたまらない。
嬉しくてたまらないはずなのに……
その気持ちを口に出す勇気が
出てきてくれなくて、
ニコリと笑うことすらできない。
「一人で作っているときは
全然うまくいかなかったのに。
一颯に間違っているところを
教えてもらったら、
結構簡単に作れたんだよ。
ほら、このシュシュ。
不器用な俺にしては
上手にできているでしょ?」
「……はい」
「桃ちゃんの喜んでくれる顔が
見たくて作ったんだけど……
嬉しくなかった?」
「……すごく……嬉しいです」



