「小百合、立てよ」


「やだ!」


「だから
 立てって言ってんだろ!!」



 俺は小百合の腕を無理やりつかむと
 自分の方へ思いっきり引っ張った。


 そして
 俺の腕の中に小百合を閉じ込めて
 思いっきり抱きしめた。



「龍! 放してよ!」


「いやだ」


「放して……
 お願い……だから……」



 俺の腕の中から漏れた
 弱々しい声。


 こんなか弱い小百合の声
 初めて聞いた。


 小百合が俺の前で泣いていることだって
 今日が初めて。


 だから一瞬
 小百合のお願いを聞いてあげたいと
 思った自分がいた。



 でも、小百合ごめん。


 俺、今

 お前のこと
 抱きしめたくてしょうがねえ。