『帰ろう』と告げたのに
 全く動こうとしない龍。


 ベンチに座ったまま
 地面をずっと睨みつけている。



 私は手のひらで
 隣に座る龍の頬を包み込んだ。


 驚いたように目を見開いた龍。


 そんな龍の瞳を見つめて
 私にできる最大限の笑顔を向けた。



「ほら、龍のほっぺたが
 冷たくなってるじゃん。
 帰るよ」



「……ああ」


 龍に家まで送ってもらったら
 今までの私たちの関係はおしまい。


 もう、こんな苦しい思いは
 しなくてすむはず。


 バイクに向かって私の前を歩く
 龍の背中を見つめながら、
 私はそんなことを考えていた。



   ☆龍牙sideにつづく☆