「座れよ」


「うん」


 龍と距離を取りたくて
 なるべく隅に座ったのに。

 
 ベンチが小さいのか
 龍の体が大きいのか。


 お互いの肩が
 触れ合いそうなほどの近さに、
 心臓がドクドクしはじめた。



「小百合、薄着じゃね?」


「龍がいきなり
『ついて来い』なんて言うからでしょ」


「……ごめん」



 龍の弱々しい声。

 
 ごめんなんて言わないでよ。

 なんて答えていいか
 わからなくなるじゃん。



「別に……」


 かわいい返事なんて
 1ミリもできない私。



 そんな私の背中が
 急に暖かくなった。