「おばさん……
 花見やるの?」


「え? 
 そうなの。そうなの。

 龍牙くんと桃華ちゃんが来るって
 小百合に伝えたら、
『みんなでお花見したらいいじゃん』って
 あの子が言い出したから」



「……じゃあ

 ……帰るのやめる」



 うつむいたまま
 靴を脱ぎだした龍兄。


 相変わらずムスッとしているけど
 一瞬、
 ちょっとだけ口角が上がったのを
 私は見逃さなかったよ。


 龍兄は
 小百合さんが自分のために、
 会社を休んでくれたり
 早起きして料理を作ってくれたことが
 嬉しかったんだね。


 嬉しい感情を表に出せない
 意地っ張りさが可愛くて、
 私は龍兄の顔を見て微笑んだ。