「龍兄、ちょっといい?」


「桃か? 入れよ」


 ドアを開けた時
 ベッドに寝転がる龍兄が
 何かをさりげなく枕の下に隠した。


 龍兄……

 隠しきれていませんよ……


 本の背表紙の文字が
 はっきり読めちゃいますよ……



 龍兄がとっさに隠した
 恋愛本のタイトルは

『奥手男子の必勝アプローチ』



 フフフ。


 龍兄。
 恋に奥手だってこと
 自分でわかってるんだ。


 龍兄が可愛く見えてきて
 本を隠しきれていないことは
 気づいていないふりを
 してあげることに。