「と……十環先輩?
 龍兄はまだ……
 失恋したばっかりだし……」


「この前ね、龍牙さんに言われたの。
『小百合姉さんが女に見えたから
 当分、俺の家に来ないって』」



「それって龍兄が、
 十環先輩のお姉さんのことを
 気になりだしたってことですよね?」


「桃ちゃんも、そう思うよね?
 俺も、龍牙さんが姉さんを
 『特別な存在』って思い始めたって
 見ているんだよね。

 だからね、姉さんが家にいる時に
 龍牙さんに俺の家に来てって
 言ってるんだけど。
 全部断られちゃって……」



 十環先輩。

 そんな悲しそうな声を
 発しないでください。


 十環先輩が笑ってくれるように
 私がなんとかしたいって
 思っちゃうじゃないですか。



 決めた!

 
 私が絶対に
 大好きな十環先輩の
 期待に応えてみせる!



「十環先輩。
 龍兄のことなら
 私に任せてください」


「本当?」


「はい。
 絶対に龍兄を
 十環先輩の家に行かせてみせますから!」


「桃ちゃん、ありがとう」


 スマホ越しに聞こえる
 十環先輩の声。


 きっと今
 王子様級の優しい笑顔なんだろうなと
 想像するだけで、
 胸がキュンキュン嬉しくなる。