「俺さ……
 当分の間
 十環の家に行くのをやめるからな」


「え?
 何でですか?

 龍牙さんが来ないと
 母さんたちが悲しむんですけど」


 熱を帯びた顔が恥ずかしいのか
 龍牙さんは
 大きな右手で顔を覆った。


 そして沈黙の後
 弱々しい声が聞こえてきた。


「なんか俺……
 小百合の(さゆり)ことが……
 女に見えてきた……」


「へ?」


「だから当分
 お前の家には行かないからな!!!」


 そう言い捨てて、
 部屋を出て行ってしまった。


 もしかして龍牙さんって……

 小百合姉さんのことが
 気になりだした?