「お前たちさ、俺たちがいること
 今、忘れてただろ」


「見つめあうなら
 TODOMEKIの倉庫を出てからに
 してもらえますか?」


 十環先輩しか目に入っていなかったから
 忘れていた。

 私たちの周りにいる人たちのことを。


 私は急いで
 十環先輩から視線をはずし
 熱を帯びた頬を手のひらで隠した。



「でも、マジでビビったよな。
 いっつも余裕たっぷりに
 笑ってる十環が、
 あんな切羽詰まった顔をしててさ」


「切なそうに桃華さんを
 抱きしめてる十環さんの顔、
 すっげー綺麗でしたよね?
 俺、写真撮ろうか迷いましたよ」


「で、桃華はさ
 TODOMEKIの姫はやってくれるわけ?」


「公星さん、やめてくださいよ。
 俺の桃ちゃんを誘うの」


「十環、うちの桃姫を
 お前だけで独り占めすんじゃねえよ」


「祥吾がいるから、余計に心配なの。
 俺はもう
 TODOMEKIを辞めているのにさ」


「じゃあ十環も
 TODOMEKIに入ればいいじゃん」


「え?」