「いくら公星さんでも
 桃ちゃんのことを
 渡すつもりはありませんから」


「え?」


 後ろから包み込んでくれる
 十環先輩の頬が私の頬に触れていて
 ドキドキが止まらない。


「桃ちゃん、
 俺、ちゃんと言ったよね?

 大好きなのは結愛さんじゃなくて、
 桃ちゃんだって」


「でも、寝言で言ってたから……
 『結愛さん』って……」


「それはごめん。
 俺、覚えてない」


「それに、机の上にあった
 ファッション雑誌。
 結愛さんがのったページに
 付箋が貼ってあって」


「あれは
 姉さんが勝手に俺の部屋に入って
 置いていったの。

 姉さんに聞いたけど
 結愛さんが載っていたから
 付箋を貼ったわけじゃないって」


「じゃあ、なんであのページに?」


「それは……ここでは……言えない」


「それに、それに
 十環先輩が私と
 付き合ってくれたのだって
 龍兄やお父さんに脅されたからでしょ?」


 私は十環先輩の腕からするりと抜け出し
 十環先輩を見た。