「私が龍兄の妹じゃなかったら……
 十環先輩の彼女は失格ですか?」


「え?」


「十環先輩も
 私なんかと付き合ってくれているのは
 恩がある龍兄の妹だからですよね?

 逆らえないのかな……
 龍兄には……」


「桃華ちゃん、それは違うわ」


「ちゃんとわかってますから。
 十環先輩が本当に好きなのは
 私じゃないってことくらい」


「十環くんは
 本当に桃ちゃんのことが……」


「好きって言ってました?」


「え?

 さすがにそういうことは
 親には言いにくいでしょ」


「ですね。
 変なことを言ってしまって
 すみませんでした。

 朝ごはん、やっぱりいいです。
 早く帰って寝たいので」


「十環くんをここまで背負って
 歩いて来てくれて、疲れているでしょ?
 お家まで、車で送るわね」


「大丈夫です。
 TODOMEKIに自転車を
 置きっぱなしにしてあるので」


「でも、TODOMEKIまで
 かなり距離があるのよ」


「電車を使えば、すぐですから。
 十環先輩が起きてきたときに
 朝ごはんを用意してあげてください」


 私は無理やり笑顔を作ると
 十環先輩の家を後にした。