さっきまでのほとぼりが嘘だったように しんみりとした空気が流れる。 ねぇ上月くん。 どうしてそんなに泣きそうなの? 「上月…くん」 「大沢さん。日が暮れちゃったね」 わたしの言葉を遮るように 上月くんは言う。 空を見ればいつのまにか紺色のベールが 存在を広げていた。 「俺さ、女性と付き合うと必ず言われるんだ」 「……なんて?」 「重いって」 白い月を見つめる上月くんはやっぱり綺麗で 重いなんて湿気っぽい言葉はまるで似合わない。