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「カァ~!zzz…カァ~!zzz…。」


「ちょ・・豊川さん!・・豊川さん!!」


周りから鋭い眼光が飛んでくる。

貴婦人な女性やダンディな男性の方々に頭を下げながら・・

雰囲気ぶち壊しで、いびきをかき始めた豊川さんの肩を揺する。



「なに寝ちゃってくれてるんですか・・!」


「すみません。穏やかなピアノの音色に包まれていたら久し振りに安眠しました。

今度“ピアノ大全集”のCDでも買ってみましょうかね。」


「それより、この次ですよ。
三井キョウコさん。」


「ナイスタイミングですね。」



大あくびをした豊川さんのおかげで、
再び鋭い眼光を食らってしまったので、

周りの席の人達に頭を下げたところで・・

司会者のアナウンスと共に、

事件以来、久し振りにその姿を見るキョウコが登壇する。



「・・・って・・・手ぶら・・?」


「楽譜無しで弾くつもりのようですね。」



一礼してピアノへと向かう間・・どこか他の奏者の人達よりも拍手が喝采な気がした。


fi☆veのファンも混じっているのだろうか・・いやでも・・・

周りを見渡しても、

いかにも“クラシックファン”という言葉が当てはまる高貴な人達ばかり・・


なんとなくだけど・・“おかえりなさい”と拍手が言っている気がする。