「・・・・・・・・・・・。」


東京は・・この街には、
“遅い時間”なんて無い。


こんな時間にも関わらず、

サラリーマンさん。
酔っ払いさん。
パリピ君。

たくさんの人が行き交う中を・・
ただ歩いていた。


頭の中を激しく駆け巡る感情。

成田空港で再会した、かつての友。
見ただけで分かった指先。


“努力の天才”しか持つ事のできない、
洗練された指先。


“努力の天才”しか放つことのできない、
8年振りに見せつけられた圧倒的オーラ。



「・・・・・・・・・・・・・・・。」



たくさんの人が行き交う中を・・
ただ歩いていた。


行き先なんて無かった。
行く当てなんか無かった。


それなのに・・・・・・


「・・・・・・・・・・・・・・・。」




気がつけば・・この両足は・・
“レッスン場”の前まで来ていた。


「開いてるわけないよね・・・。」


当たり前だけど電気はついてなくて、
人の気配も無くて、

当たり前だけど引き戸をこうして引いたところで・・


“ガチャリ”


「え・・・・・・・・・。」


・・・・・開いてる・・?


扉が開いた先、消灯された暗闇が広がる。