心が軽くなった気がしたけど、
やっぱり口に出して言葉にしている間、
ずっと手は震えていた。
ピアノが大好きだった。
毎日頭の中は五線譜と音符で溢れていた。
そこにはいつも笑顔があって、
いつも楽しさがあって、
私の隣には、
いつも大好きなお母さんがいた。
楽しさっていうのは、
歓びっていうのは、
“弾く”ことじゃない。
“聴いてもらえる”ということだった。
お母さんに聴いてもらいたい。
おっきな場所で、
お母さんに喜んでもらいたい。
褒めてもらいたい。
終わった後に頭を撫でてもらいたい。
そんな幼い頃の想い、思い出。
抱いた【夢】・・・・【ピアニスト】
「・・・・・・・・・・・・・。」
「「「「「「・・・。」」」」」」
気がつけば、真剣に私の話を聞いてくれる6人の顔が滲んでいた。
小学6年の時に訪れた永遠の別れ。
空っぽになったこの心。
頭の中から消えた五線譜と音符。
代わりに響く“負け犬”の罵声。
空っぽのまま過ごした日々。
今、どうして私がこの場所にいるのか。
「・・スッ・・スッ・・。」
気がつけば、イチさんにぎゅっと抱きしめられていた。
二さんがティッシュを差し出してくれた。
リーダーが目元を拭ってくれた。
ヨンさんがこぼれ落ちたコーヒーを煎れ直してくれた。
「何が見つかるのか・・ここでどうなるのか分からないけど・・
でも私も・・今やれることを頑張って、空っぽが空っぽじゃなくなれるように・・
fi☆veの一員として・・明日からも自分と向き合います・・。」
最後の言葉を絞り出した時、
気がつけば手の震えは治まっていた。



