俺が見たのは、ベッドの布団に顔を伏せて泣く父さんの姿だった。
父さんが泣くのを俺は見た事がなかった。
「夕紀…夕紀…」と泣く父さんに胸が痛んだ。
「ごめん。ごめんな…俺が、俺があんな事になってたから…お前が…」
父さんの言葉が引っかかる。あんな事、がどうしても思い出せなくてずっと考えていた。
そもそも、俺があの仕事を始めたのはどうしてなのか。そこを考えることにした。
俺が仕事を始めたのは母さんが亡くなってからだ。その時、父さんは…
ずっと仏壇の前にいた…待て、仕事はどうだっけ?父さんの海外勤務が決まったのは、母さんが亡くなった次の年だ。その間は…
していなかった…そうだ、父さんはショックでずっと仏壇の前にいた。だから俺が仕事を…父さんはあの時の事を後悔しているのか?