言葉も気持ちも大切だけど
ユキさんの温度に、すごく、安心させられる。
だから恋人はキスをするのかな。
愛を伝える手段って言葉や振る舞いだけじゃないんだね。
部屋にリップ音が響く。
「バスに乗り込むとき。考えてたの? 今日も俺は触れてこなかった……って」
「っ、うん」
あんなに簡単に繋いできた手を繋がれなくなったら、不安にも、なりますよ。
「図書室に残ってるとき」
ユキさんの指が、服の中に入ってくる。
「声我慢すれば。奥でできそうだなって考えてた」
――――ドクン
「奥……で?」
「あんまり人がこないでしょ」
「っ」
「2人で過ごした想い出の場所――再会した食堂。初めてキスした屋上手前の階段。俺が気持ちをモモに告げた、カーテンに囲まれた保健室のベッド。俺が卒業したあともそこを通ったり利用するたびにモモは俺とのことを思い出してくれるのかな」
やっぱり
「そのどこかに俺とモモが愛し合った証を刻んでやりたい」
ユキさんは
「……なんてね」
――――私をドキドキさせる天才だ。


