「それとも」


先輩の顔が、迫ってくる。


ただでさえ近いのに。


ふわりと風がふいたとき、 


「俺がとってあげたから?」 


耳元で、小さく囁かれた。


――見透かされてる


「流されちゃったのかな」


まだ真夏というには、はやすぎる。


それでも、その甘い声に

溶けてしまいそうだと思った。


どうしてそんなに躊躇いなく近づいてくるんですか。

こっちは心の準備もなにもできていないのに。


「そう、です。先輩が……。手伝ってくれたから」