「えっと……」


みゆき先輩のつぶやきに戸惑っていると


「そいつ不思議くんだから。気にしないで」

朝霧先輩が、はにかんだ。


このひとは、どことなくリーダーっぽい雰囲気がある。


「もしかして。ピーチティーのことですか」


桃色の猫だから、モモ。


「うん。でも、黒ごま推しになったんだ?」
「……はい」
「なんで変わったの」
「え?」
「どうしてモモから黒ごま推しになったの」
「それ、は」


あの日、

先輩にとってもらった黒ごまが

とてもとても可愛く思えてならないから。


宝物に、なっちゃったから。


「案外手に取ってみたら可愛く見えた?」


言えないよね。


先輩から渡された瞬間

ゲームセンターのぬいぐるみが、特別な一点ものになったように感じたなんて。


先輩との出会いは、自分の好みさえ変えてしまうくらいの衝撃的な出来事だった、なんて。