保健室に着くと


谷崎先生からタオルや乾いた衣類を借りて


「カラダ拭いてやろうか」
「じ、自分でふける!」


カーテンをめくって覗いてくるイチヤくんを追い出し


ささっと制服に着替え


濡れた髪をドライヤーで乾かすあいだ


谷崎先生は、なにも聞いてこなかった。


私たちに今必要なものを用意して、あとは自分の仕事を淡々とこなしていた。


きっとそれは無関心なんかじゃなくて。


もし、生徒の面倒な問題に関与したくないなら


そもそもにあの手紙を覗きみたあと、見て見ぬフリをしただろう。


なのにイチヤくんを呼び出し

ボールの件と手紙のことを伝え

こうして私が落ち着けるまで


敢えて、聞かないでいてくれている。


そうなんですよね、谷崎先生。


ねえ、実柑。


実柑の惚れた人は、とても素敵な人だね。