それからユキさんの家につくまで、お互いに、ひと言も話をしなかった。


できなかった。


なにを言えばいいかわからなくて。


玄関の扉を開けて中に入ると

靴も脱がずに

ユキさんは私をドアにおさえつけて、強引にキスしてきたんだ。


「付き合えなくてもいい。いちばんじゃなくてもいい。欲しいのは彼氏じゃなくて俺。だから傍にいさせて。俺だけを想っている――なんておかしなこと言ってるのは、誰?」
「……っ」
「自分がおかしいことくらいわかってる。だから手放そうとした。なのに。それでも近づいてきたのは誰」
「わ……た、し」
「そうだ。君はおかしい」
「ユキさ……」
「一緒におかしくなっちゃえばいい」