「え、もう決めたの!?」
「なるべくボリュームあるやつがよくて」
実柑はスレンダーなのによく食べる。
痩せの大食いというやつだ。
私もカツ丼にしようかな。
でも、そんなに食べられる気がしない。
「おせぇな。はやくしろよ」
後ろから、声が聞こえてきた。
「1年?」
「教室で食ってろよなー」
続いて不満を口にする上級生に
「なんですって……!」
食ってかかろうとする実柑の腕を引き、止める。
「私が並ぶ前に決めておかなかったから悪いの」
「えー、でも」
「ごめん。すぐ買うね」
財布から500円を取り出す。
もう、適当に食券を買おうと手を伸ばす。
「ハーブチキン」
高いところから、声が落ちてきた。
たった一度だけしか耳にしたことがないのに、忘れられない、あの声が。


