二度と名前を呼んでほしく無くて、でも1番呼んで欲しかった人。


大嫌いになりたいのに嫌いにすらなれない人。


何度裏切られても何度も期待してしまう人。


いつか…いつかまたぎゅっと抱きしめてくれるんじゃないかって、かわいいよって大好きだよって言って欲しかった人。


だけどこの人を見ると恐怖が体を支配する。


「恭子!見つかったか?」


「え、えぇここに居たわ。」


いくら走り出したくとも金縛りにあったみたいに体が動かなくて…。


「…恭夏、久しぶりだな。どうしておまえがここにいるんだ?」


そう言って気持ち悪いくらいの笑顔を見せるお義父さん。


「お、お久しぶり…です。お義父さん。」


「どうした?固いじゃないか。」


「ご、ごめんなさい、お義父さん。」


「で、どうしているんだ?学校は?」


殴られた時のことがフラッシュバックして。


「あ、…遠足で…。」


おまえさえいなければと言われたことがフラッシュバックして。


「そうか!それにしても友達はいないのか?1人みたいだが。まあ、おまえみたいな価値の無い人間と仲良くするやつもいないか。」


私を置いて旅行に出掛けた3人の姿がフラッシュバックして。


「あ、…。今、待ち合わせしてて、、、。」


体が言うことを聞かなくて。


「どうだろうな。置いてかれたんじゃないのか?」


家族に震えた声で返事をするので精一杯だった。