耳にスっと入ってきたその声は私にとって恐怖の対象でしかない。


だから認識したくない。


だけど振り向いてしまう。


でも…。


いくら探してもあの人は見当たらなかった。


「恭夏?どうしたの?」


瑠姫ちゃんが不思議そうにこちらを見てきてふと現実に帰った。


「ううん!なんでもない!次どこ行く?」


パッと笑顔で取り繕った。


そうだ、いるはずが無い。


ここは東京だ。


あの人達は愛知にいるはずだ。


だけど、不安は拭い取れなくて。


胸騒ぎがずっとしていた。


「うーん、私、その前にお手洗い行きたい!」


「了解!じゃあ深澤君行こ?」


「おう。あ、鈴村にも連絡しとくな。」


「あ!ありがと!」


一抹の不安を覚えながら私たちは会場を後にした。