碧唯side


「で、元の話に戻ると、俺はお前のことは嫌いじゃない」


やっと言えた!


でも、返ってきたのは予想とはまったく違う答えだった。


「…でもさ、一回は嫌いになったんでしょ?」


「え?」


「誰にも嫌われないようにするために愛想笑いで、生きて、いこ、うってき、決めたのに、それでも、嫌われ、ちゃう、なら…どうしたらいいの?」


急に泣くなんて誰が思うだろう。


「落ち着け、如月」


いつも大人っぽく振る舞っている彼女が、子供のように見える。


「だ、だって…ヒュッ」


彼女は息を吞んだ、自分の傷だらけの腕を見て。


「見たの…?」


「夢でそこを抑えながらうなされていたから気になって…。悪い」


「見ちゃったんだ…。驚いたでしょ?」


「正直に言えば驚いた」


「だよね。深澤君が思っている事は多分、正解だよ。」


じゃあ、やっぱり…


「世間で言う虐待かな。」


「じゃあ、一人暮らしなのは」


「そう、家族から逃げる為。まあ、他の理由もあるけどね。」


ああ、そうか。


あの家にいたら壊れるって言うのはこういう事か。