「なんで、歩きなの?」


俺は今、如月恭夏と帰っている。


「家の方針。お金持ちだからできることを基本的に自分のためにやらない。」


俺から提案した。


「へぇ~、家の方針なんだ!…。」


理由は気になったから。


俺に媚を売る女だったら、俺が送っていくと行ったらここぞとばかりに食いつくはずだ。


なのにこいつは断った。


むしろ嫌がっていた。


「如月は?」


「何が?」


「どうして歩き?」


普通に気になった。


「私は庶民だからそんな送り迎えなんてないし、何より一人暮らしだから!」


「…。なんで一人暮らし?」


だってまだ高1だぞ?





「…あの家にいたら壊れちゃうから」





壊れる?


家族と何かあったのか?


「なんてね!ほんとは家から通うのが大変なだけだよ。」


「…大変だな。実家はどこなんだ?」


そんな噓、俺に通じるわけない。


なにを隠したいんだ?


「愛知県だよ。華木学園が東京だから遠くてね。受験するかすごい悩んだよ。」


愛知、か。


これは本当のことだろうな。


「すごい決断力だな。」


素直にそう思った。


「そんな大層のものじゃないよ。あ、ここまででいいよ。」


「最後まで送っていく」


「いいよ。深澤君が遅くなっちゃうよ。じゃあね」


「待て。」


この帰り道にわかった。


「なに?」


「如月に言いたいことがある。」


「?どうしたの?」


「俺はいろいろな人を見てきた。」


何故か伝えてみたかった。


「俺がfuka-zawaホールディングスの子息と知って媚売ってくるやつは必ず噓くさい笑顔を浮かべている。だから俺はお前が嫌いだ。お前のその噓くさい笑顔が。」


「だけど…」


お前は媚を売るようなやつじゃない。だからお前に興味がわいた。


そう言おうと思った。


けどその前に…


「ごめんね」


「えっ?」


「嫌いなやつに校舎案内されるなんて嫌だったよね。ごめんね。でも、言ってくれれば良かったのに。あ、話すのも嫌だよね!ごめんね。これから必要最低限以上話しかけないようにするね!ごめんね!じゃあね!また明日!」


「いや、そうじゃな、ってちょ、待てって!」


彼女は走り出した。


呼び止めたけど彼女はとまらない。