…。


「なんで、歩きなの?」


「家の方針。お金持ちだからできることを基本的に自分のためにやらない。」


「へぇ~、家の方針なんだ!…。」


…。


会話が続かない…。


自分から誘ったんだからなんか努力してくれな…


「如月は?」





「何が?」


話しかけてきた!


「どうして歩き?」


「私は庶民だからそんな送り迎えなんてないし、何より一人暮らしだから!」


「…。なんで一人暮らし?」


「…あの家にいたら壊れちゃうから」


…!私、今なんて言った!?


急いで言い直さなきゃ!


「なんてね!ほんとは家から通うのが大変なだけだよ。」


信じてくれたかな…?


「…大変だな。実家はどこなんだ?」


信じてくれた!


単純で良かった!


「愛知県だよ。華木学園が東京だから遠くてね。受験するかすごい悩んだよ。」


「すごい決断力だな。」


「そんな大層のものじゃないよ。あ、ここまででいいよ。」


「最後まで送っていく」


「いいよ。深澤君が遅くなっちゃうよ。じゃあね」


「待て。」


帰ろうとしたら、深澤君に止められた。


「なに?」


「如月に言いたいことがある。」


「?どうしたの?」


「俺はいろいろな人を見てきた。」


急に変な話をしてきた。


「俺がfuka-zawaホールディングスの子息と知って媚売ってくるやつは必ず噓くさい笑顔を浮かべている。」


ズキン。ズキン。


噓くさい笑顔?


嫌な予感がする。





「だから俺はお前が嫌いだ。お前のその噓くさい笑顔が。」





キラ、イ?


ああ、嫌いか。


「だけど「ごめんね。」え?」


「嫌いなやつに校舎案内されるなんて嫌だったよね。ごめんね。でも、言ってくれれば良かったのに。あ、話すのも嫌だよね!ごめんね。これから必要最低限以上話しかけないようにするね!ごめんね!じゃあね!また明日!」


「いや、そうじゃな、ってちょ、待てって!」


言い終えると走って家に向かう。


深澤君が何か言っていたけど耳に入らない。


家につき、玄関に入るとしゃがみ込んでしまった。