【恋雪side】
紫苑くんが柚子ちゃんとのことをはなしてくれて、みんな苦しい顔をした時間から数時間。
ひとまず元気になって欲しくて
みんなで鍋パーティーを開催した。
表向きはいつも通り振舞って、ニコニコ笑っている紫苑くんだけど
きっと本当は誰よりもみんなに気を使って
誰よりも不安で辛いのを画しているんだと思う。
紫苑くんはそんな優しくて頑張りすぎちゃう人だから。
「紫苑くん、もう鍋食べないの?」
鍋パも盛り上がり、各々騒いでいる時、ふと紫苑くんがベランダに出ているのが目に付いて
私もベランダに出ると、紫苑くんは優しく笑ってくれた。
「お腹いっぱいになったから外の風浴びてんだ」
「そうなんだね」
紫苑くんは沢山食べるけど、今日はそんなに食べてなかったのにな…
なんて思いつつベランダに置いてある椅子に座る。
「寒いね」
「12月だからな」
「それもそうか」
話すことはなく、そんな話をする私に紫苑くんは笑って
でも、ずっとベランダから外を眺めている。
その横顔が切なくて、悲しげで
なんだか私まで悲しくなってきた。
「女運、無かったんだろうな」
悲しげな横顔で、苦しそうに顔を歪めながらそう呟いた声は今にも消えそうで、震えていた。
「好きだったんだけどなぁ…」
紫苑くんのその心からの声は
夜風がさらっていくように流れてしまう。



