地獄の話し合いを終え

柚子の家から父さんと共に出ると
やっと父さんが口を開いた。






「俺は良くなってると思うよ紫苑のこと。
父親だから甘やかして言ってる訳じゃなくてね」



「え?」






突然褒められた俺は驚いて立ち止まると
父さんは優しく笑ってくれた。






「俺が医大生の時はバイトして遊んでしたいことばっかしてたし。
それをちゃんと勉強バイト育児。いっぱいいっぱいだけど弱音も吐かず、イライラもせず、遊びたいっても言わず、成績も落ちない。
充分頑張ってるよ」






あまりそんなことを言ってくれない父さんからの優しい言葉に、なんだか泣きそうになった。



でもやっぱり俺の中に根付いてるのは、柚子から言われた言葉たちで、全部を嬉しいと受け止めることが出来ない。






「お前の下した決断が正しいかなんて誰にもわからない。
でも、俺は最後まで責任を取ろうと色んなことを一生懸命やったんだから正解だと思うよ」



「うん…」



「ゆっくりでいい。少しずつ柚子葉だけじゃなくて、自分も大切に、自分のしたいことも程々にしなさい」






そう言って、頭を撫でてくれた父さんに
とうとう我慢が出来ずに涙が溢れ出した。



今まで生きてて、全然泣いたことなんてなかったのに、ここ2日で沢山泣いている気がする。






「もうなんか、柚子も香菜も全部嘘で、俺のしてきたこと全部間違ってたんだって…そう思う」






みっともないのに、泣きながらそんな事が口からこぼれおちてきてしまった。