「はぁ、なんで泣くわけ?」
「ごめん、気にしないで」
自分でも勝手に流れてくる涙を止める事が出来ず俯いていると
柚子はイライラした様子で舌打ちをした。
「泣くとか男として情けないと思わないの?
ていうか、中途半端は嫌だとか責任取るだとか言っておいて別れる気なんでしょ?」
「……」
「中途半端じゃん。
中途半端に好きになって、中途半端に医者になって農家になろうとして、中途半端に責任取って!
どうせ柚子葉のことも中途半端に育てるんだよ」
容赦なく降り注がれる言葉に心がちぎれそうな感覚に陥る。
もうそれ以上言葉を発さないでくれ。
もう辞めてくれ。
そんな思いでいっぱいいっぱいな俺を父さんは何を言うでもなく顔に出すわけでもなくただ無表情で見ていた。
「俺は、柚子のこと好きだったしずっと一緒に頑張ろうと思ってた。
だから柚子が元気がない時も支えたかったし、気晴らしも沢山させてあげたくて、何かを強要したりはしなかった」
「そうね、中途半端に優しいからね」
「だけど、それでも好きでもない人と一緒にいるのは辛いと思うし、嫌だろうからお互いのためを思って別れよう。
柚子葉は俺が面倒みるよ。何を言われても俺は俺の子供だと信じてるから」
「当たり前でしょ。
使い物にならない子なんて要らないから」
きっとこの関係を修復するのは不可能で。
色んな利益のために俺と付き合ってた柚子と
好きで一緒にいた俺とでは温度差がありすぎる。



