【紫苑side】






「紫苑くん!起きてってば」






いつの間にかぐっすり眠っていた俺は、突然の大声と頬を叩かれた感覚で目が覚めた。



目を覚ますと、さっきまで居なかったはずの柚子がいて少し困惑。






「柚子?」



「お金足りなかったの。ちょうだい」



「え??」






寝起きの突然のお願いにすぐに頭が理解出来ずに聞き返すと

柚子は少しイラついたようにもう一度"足りなかったの"と言ってきた。




それでようやく、今日の朝自分の好きに使っていいよと渡したお金が足りなかったってことなのだと理解する。



足りないっていっても…結構な金額渡してたけどな…。






「柚子、でも結構渡してたよね?
それを1日で使って足りないってのはもう少し考えて使うべきじゃないか?」






さすがに金銭感覚はきちんとしてて欲しくて
優しめにそういうと、柚子ははぁ?といかりスイッチが入る。






「自分は柚子葉の面倒見らずに友達に見せて寝ておいてよくそんなこと言えるよね?
ていうかあんたは私に逆らえる立場なの?
今まで寂しい思いさせてきたのも、子供を産ませたのも全部あんたでしょ?」



「いや…」



「いやじゃないし!
自分は?元カノときゃっきゃしてていいですねー!
私はお腹に傷つくってまで産んでやったのに、自分はほかの女と浮気ですか!
そのうえ私のやりたいことにまで口を出してくるんだ?」






よほど怒らせたのか、言葉の総攻撃に何も言い返せずにいると


柚子の体が突然グイッと傾いた。






「お前ふざけんなよクソアマ!!
紫苑は今熱があんだよ!それに面倒見てんだろ!!毎日!!お前が一番知ってんじゃねーのか!」



「離してよ!」






そう、光司が柚子の胸ぐらをつかんで叫んだのだ。



まずいな、光司がキレたら手が付けられないぞ。



俺は焦って急いで光司の腕をつかんで柚子から離した。