『痛い!無理!!』






そう、柚子が叫んだのは数時間前。




1月5日早朝。
予定日よりも少し早いが俗に言う陣痛がきたのだ。






「産めるかな…怖い」



「大丈夫。俺もついてるよ。頑張ろう!」






陣痛の感覚が少しずつ狭くなって来つつも
落ち着いている今、柚子は泣きながら弱音を吐いている。




今まで辛くても耐えてきたんだ。


柚子ならできる。そんな気持ちを込めて手を握って少しでも安心してくれたらと願う。




そんな俺の姿をみた柚子は口を開いた。






「実はね、妊娠、計画的だったの」






と、突然言われたことは衝撃的な一言。


どういうことだ?
訳の分からず、俺がじっと柚子を見つめると、柚子は額に汗をうかべてへにゃっと笑う。






「ゴム、付けてたけどあれ、私があげたのでしょ?」



「うん」



「使ってたやつ全部穴開けてたんだ
紫苑くんと結婚したくて」






なんてとんでもない事実をさらっと言ってしまった柚子に目が点になる俺。



え、なんだそれ??
じゃあ騙されてたってこと??




俺の疑問を見透かしたのか、柚子は涙目で俺手を握り返してきた。






「嫌いになった?私の事捨てる?」






そんなことを言われても、もう今すぐにでも産まれそうで頑張っているお嫁さんを嫌いになれるほど鬼畜じゃなかった。




例えそれが計画でもなんでも
こうなったのはやっぱり変えられなかったかもしれないし


それだけ俺を思ってくれているのだろう。




きっと光司には怒られるが、俺はそう捉えることにした。






「大丈夫だよ、柚子。
心配しなくていいから、今は頑張ろうな」






俺の言葉に安心したのか、柚子は涙をうかべて笑った。