「ごめんな、雰囲気悪くなって」






光司が帰ってしまって、太一もおろおろしてしまった時、そう声をかけると

太一はいつもの様ににっこり笑ってくれた。






「平気だよ!
俺も柚子ちゃんには思うところあるけど、紫苑がいいと思うなら応援してる!」






そう言って親指をグッと立てる太一につられて俺も笑う。



太一は本当に良い奴で、いい意味でも悪い意味でもあんまり深く考えない。




そんな太一は実は璃苑のことをずっと好きなのだが全く振り向いて貰えてないのが可哀想なところだ。






「光司はさ、紫苑のことを本当に大事な友達だと思ってるからあんなこと言うんだ。」



「わかってるよ」






俺も大事な友達だから、強く柚子の悪口を言うのをやめろなんて言えないんだ。



どれだけ俺のことを思って言ってくれているか知ってるから。





そんなことを話していると、後ろの方から"紫苑くん"と毎日聞き慣れた声が聞こえてきた。






「遅いから迎えに来たよ」






振り向くと、そこには柚子が立っていて
柚子の姿を見た太一は直ぐに"じゃあね"と言って立ち去ってしまった。






「柚子、体調は?平気?
遅くなってごめんな
おいで、一緒に帰ろう」






最近はめっきり外に出なくなってしまった柚子が外に出てるのが珍しくて、手を差し出すと


柚子は嬉しそうに手を重ねてくる。






「さっきまで病院に行ってたの
順調だって言われたよ」






柚子は、そう言って随分大きくなったお腹をさすった。