残された俺と、柚子の父さんと母さん。


柚子の母さんは父さんに全て任せるという態度を一貫して貫いている。






「どうしても、反対ですか?」






すぐ怒鳴る柚子の父さんに少し脅えつつも、声をかけるとぷいっとそっぽを向かれる。






「俺はまだ未熟で、親の手を借りてばかりの子供です。
ですが、それを踏まえた上で学校とバイトなども同時にして、出来るだけ甘えずに支えようと思っています。
今の段階では口だけに見えるかもしれませんが、必ず幸せにします。」






よろしくお願いします。

と、深々と頭を下げてお願いするも"ダメだ"の声で切られてしまった。



どうしたらいいんだろうか。



どうしたら許してくれるのだろうか。





そんな疑問ばかりが浮かんできて、答えが見えない。




そんな俺に、柚子の父さんはようやく口を開いてくれた。






「君が農家を継ぐと言うなら結婚を許してもいい。
どうせ君との子供を妊娠してるんだ。近所にバレるのも時間の問題だからな、佐藤さんにも断られるだろう。
なら、君が柚子を説得して継ぐならいいぞ」






"まぁ、金持ちのぼんぼんには出来ないだろうがな"


なんて嫌味付きで提案された。




農家を継ぐ、か。




それは俺にとって人生かけて来た医者になるという夢を辞めるということ。




そう簡単には答えが出せない。



柚子のためを思うなら、それを受けるべきなんだろうけど…。





俺が、悩んでいると柚子の父さんはまた口を開いた。