「私も本当に本当に好きだったよ」






柚子は涙を溜めた目で俺を見てはっきりそう言った。


聞き間違いかと思ったけど違うのだろう。






「散々酷いことして、好きじゃなかったって言ったけど本当は好きだった。
いや、今でも大好きなの。
好きで好きで好きすぎて分からなくなって紫苑くんを傷つけて嫌われようとした…。」



「柚子…。」



「色んな男を取っかえ引っ変えしたけどやっぱり紫苑くんを忘れれなくて、その度に会いたいからって酷いことして会いに行った…。」






そう言う柚子の言葉を聞いて不思議と俺は冷静でいられた。


真実が知れてよかった。


ちゃんと俺だけの独りよがりで不幸せにした訳じゃなくて良かった。




怒りなんかより、そんな気持ちが湧いてきて俺の目からも不思議と涙が零れてきたのだ。






「ごめん…もう、私とは関わらなくていいからね…。
沢山しばりつけて傷つけてごめんなさい…。」






そう言って泣く柚子と、何も言えないけど涙が止まらない俺。






「柚子葉を宜しくお願いします」






そう、柚子は泣きながら土下座をした。



そんな光景がみていられなくて
そんなことをして欲しいわけじゃない俺は


そっと、柚子の肩を抱いて起き上がらせる。






「俺の事、ちゃんと好きでいてくれたことがわかって嬉しい。
俺もすごくすごく大切で大好きだったよ。
上手く伝えられなくてごめんな。
沢山苦しませてごめんな」






もっと俺の愛情表現が上手ければ、違った未来だったのかもしれない。



そんな気持ちで柚子をそっと抱きしめた。