「なんの用?」






今一度扉を閉めたい衝動をぐっと堪え、聞き返すと

柚子は突然俺に抱きついてきた。






「もう一度寄りを戻して欲しいの」



「……は?」



「私もう、本当に紫苑くんじゃないと無理なの」






そう言って俺の顔を覗き込んだ柚子に流石に頭が痛くなった。



いや、もう、なんていうか…。


無理じゃね?



え、俺がおかしいの??



柚子の不可解な行動に頭がパンクしかけているが、一先ず柚子葉に見られるのはまずいと玄関の扉を閉めて外に出る。






「私今家もなくて、親とも半分縁切られてるみたいな感じで…。
彼氏も頼れる人もいないの」



「ああ……」



「だから頼らせて?
昔は夫婦した仲じゃん?柚子葉も産んだの私じゃん?」






そんな、支離滅裂なお願いにどうしたものかと困ってしまう。



とにかく今からは柚子葉と恋雪とデートなわけで。



正直柚子に構っている暇はないんだよなぁ…。






「断られたら行くところないの!
お願い、紫苑くん助けて」






柚子はそう言って涙をポロポロと零した。






「はぁ…。とりあえず今から忙しいから話し合いするにしても日を改めてくれないか?
家がないのは困るから、ホテル代に使って」






今日は話す気にもなれないし時間もない。


だったらとりあえず考える時間もできる方法を取ると素直に頷いてくれた柚子。






「わかった、また来るね」






野宿して襲われたりなんてしたら心配だから、ホテル代何泊か分などを手渡すと、柚子はくるりと踵を返して帰って言ってしまった。




嵐のような登場には俺がついていけてないんだけど。