「わ、私は紫苑くんが好きなの」



「うん」



「本当にごめんなさい…許して…」






そうは言われてもねぇ。


恋雪の必死な言葉に俺は少し苦笑いになる。






「俺は別に怒ってない。
怒る権利もないし、別に付き合ってねーし」



「そ、そうだけど…」



「俺は付き合うつもりないし、幸せになりたいなら潤くんとこ行きな」






我ながら酷い言い分だとは思う。

付き合うつもりは無い。
そんなのわからないのに。


それでも恋雪は俺の腕を掴んで涙を流した。






「もう一度私に頑張るチャンスください」






涙をポロポロと流してお願いする恋雪は健気だった。


俺のくだらないもやもやでこんな泣かせてしまったのこと罪悪感が出てくる。



そもそもこうなったのも俺が付き合ってないからなわけで。






「ごめん、いいよ、本当に怒ってない」






悪いのは俺なのだから。


そう、伝えると恋雪は控えめに抱きついてきた。






「私は紫苑くんだけだよ
潤くんは優しくていい人だけど好きなのは紫苑くんだけなの」






恋雪のそんな言葉に、こんなに真剣に俺を好きでいてくれる人は他に居ないなと思った。


そう思うとやっぱり可愛くて愛しくて。



こんなにいい人を他の人に渡したくない。
もう二度と触れられたくない。


そんな気持ちが湧き上がってきた。






「恋雪、好きだよ」






誰にも渡したくない。


そう思った俺の口は、勝手にそんなことを発していた。