【恋雪side】



「恋雪」





私が涙を流していると、そう優しく呼んで近づいてきた紫苑くんにまた涙が止まらなくなる。




また、私じゃダメだった。



また、紫苑くんは人のものになってしまった。




そんな絶望の中でも、やっぱり優しくて不器用で責任感の強いお人好しの紫苑くんが大好きな気持ちは消えない。







「ごめんな…。」






紫苑くんの謝罪に、謝らなくていいのにと思う。


だって紫苑くんは悪くないもん。


責任感の強い紫苑くんを性格を利用してしたいようにしてるのは柚子ちゃん。




私には、紫苑くんが助けてと言っているように見えた。






「紫苑くん、私は何があっても紫苑くんが大好きだよ」



「……。」



「だから、私のことは利用して?
柚子葉ちゃんのお守りでも、寂しくなったら呼ぶでもいいの。
私は紫苑くんとずっと一緒にいられたら、もう高望みはしないから」






だから、私を逃げ場にして。
自分一人で抱え込まないで。



そう、伝えてそっと抱きしめると
優しく、壊れ物を扱うように抱き締め返してくれた。






「恋雪、いつでも俺なんて辞めていいからな」






そう、言いつつ抱きしめる力が強くなる紫苑くんに泣けてきた。



私は多分何があっても紫苑くんを卒業することなんてできない。





紫苑くん以外を好きになることは出来ないんだと思う。





重いなぁ、なんて思うけどそれが私だから。