現在のロシアとフィンランドの国境近くに位置する小さな町ラウトヤルヴィ、その町の近くの森で今日も一人の少年が銃の音を森に響かせる。


少年の家は猟師兼農民だった。


農家での仕事の昼休憩の際、他の男性陣は昼寝をするのだが、彼だけは昼寝をせずあらかじめ森の端につけておいた目標をめがけ建物の窓から狙撃練習を繰り返し行い、全員が起きてくるまで撃ち続けていた。



少年の名はシモ·ヘイヘ。愛称はシムナ。


彼が狙撃の練習をやめないのには理由があった。それは


「あー、今、風吹いてるからもうちょい左だな。」


こいつがいるからだ。そいつの言うことを無視したシムナが放った弾丸は的の少し右側にあたった。



「あーあはずしやがった。だから左だって言ったのに。そんなんじゃケワタガモ猟なんざできねーぞ。」


「うるさいなあ!少し黙っててくれないか。お前に言われて命中できたって意味ないんだ!ちゃんとひとりで命中できるようにならないと······。」


「そんなこと言ったって俺、死神だしなあ。ちゃんとおしごとしねえといけないし。」


「どう見たって仕事しているようには見えないぞ。仕事内容はなんなんだ。」


「それは秘密ってことで。」


「チッ」


「そうカッカしなさんなって。お前さんを殺すためだったらもうお前は死んでるさ。」


「どーだか。」


シムナはこの死神が自分にしか見えていないことからこいつが本物の死神だというのはわかっていた。


フィンランドには15ヶ月の兵役義務がある。


その後に戦争が起きても死神に殺されてたまるかという思いでシムナは射撃の練習に励んでいた。


それの副産物として、彼の家にはその腕前によって得た多くの射撃の大会のトロフィーが飾られている。


死神はその並べられた副産物を眺め、満足そうに笑うのだった。