「・・・・ヨリ・・・・くん」
ゆでだこ状態の彼女は、消え入りそうな声で言った。
近くにいても聞き逃してしまいそうな声。

彼女は一層可愛くて、思わず抱きしめたくなった。
俺はそんな衝動を必死に押さえ、ご褒美に頭を撫でるだけにした。

頭を撫でている間、彼女は少し嬉しそうな顔をしていた。
初めて見た表情。
もっと色んな彼女を・・・・・見てみたい。
俺はより一層彼女の虜になりそうだ・・・。


”またここに来てもいい?”
と彼女は言い残し、教室へ戻った。

いつでも来いって言ってやりたいが・・・・・
俺は昼休みぐらいしか、ここには居ない・・・・・しかも曜日限定で。
特別待遇の俺は、4限目・5限目しか授業を持たない。
1日に2時間受け持っている曜日は限られている。
でも彼女が来てくれるなら、昼休みにはここに居るように出勤してもいい。

次はいつ彼女を呼び出そうか考えている俺。
教師という仕事に執着もこだわりも持ったことのない俺だが、
常に彼女を見つめていられる教師という仕事を初めて、そう悪くはないと思っていた。

日に日に俺は、彼女に夢中になって行きそうだ。
小娘に心を奪われるとは、微塵にも思っていなかった。

俺は窓辺でタバコを咥えながら、自分の心に気付いてしまった。