泡沫の記憶


電車から下りると

何もなかったみたいに

手が離れた



駅から出ると一気に人が減って空間ができた



オレと咲田の間にも隙間ができた

きっとコレが普通の距離感



今日のことは

人口密度が高すぎただけの話



オレは自分に言い聞かせた



「あーぁ、夏休み、もぉイベントないね」



いつもの咲田だった


オレはまだドキドキしてた



「うん…」



「明日から、また部活だね
がんばろ!」



「うん…
咲田、いつも、ありがとう」



「…なに?急に…」



「いや、さっき日焼けのこと気にしてたけど
それもオレたちのために
毎日頑張ってくれてる証拠だし
誇りに思っていいと思う!
…オレが言うのも変だけど」



「うん…ありがと」



咲田は日に焼けた細い腕を撫でて言った



ノースリーブから出た肩が華奢で
抱きしめたいと思った



そんなこと
オレできないだろ



「来年…約束ね
忘れないでね!ウソつかないでね!」



言い方がかわいい



オレは咲田を

やっぱり

好きだな…って改めて思う