泡沫の記憶


「あ、タオル、ありがとう」



咲田は鞄からタオルを出してオレに渡した



「あー、うん…」



昨日のことを思い出す



咲田の涙

なに?あの涙の意味



「先輩と…付き合わなかった」



咲田が急に言った



「え…」



少しホッとした自分がいた



「あ…小栗に関係ないか…」



「え…あ…
…大丈夫?
先輩と、気まずい?」



「…そんなことない

もうすぐ部活も引退だし、
受験だから気持ち伝えられて
スッキリしたって言ってくれた」



「咲田、それでよかったの?」



「うん…なんで?」



「なんか、オレ、変なこと言ったかな…って
オレのせいかな…って」



「変なこと?」



咲田は、そう言って笑った



オレもつられて少し笑った

え、笑ってよかった?



昨日の咲田とは違った

いつもの咲田だった



なんか安心した



「あ、小降りになったから行こう」



咲田が歩き出した



オレも後ろから続いた



傘はいらないような雨が降ってた



オレは咲田から返ってきたタオルを
咲田の頭に掛けた



「また、洗わなきゃ…」



咲田が言った



「別にいいよ、洗わなくて」



「洗っても、小栗の匂いがする…」



咲田がタオルの端に鼻をあてて言った



「え、臭い?」



咲田は首を横に振って


「んーん…私の好きな匂い」


そう言った



好きな匂い…



「コレ、洗わないけど
返さなくてもいい?」



「え、あぁ、」



「私、キモい?」



「や、別に…」



「ありがと」



「あ、やっぱ、洗わなくていいから返して!」



「え、ヤダ…!」



咲田はタオルで顔を隠した



かわいい…



また明日から一緒に帰れる?



「返せ!」



「ヤダー」



咲田が笑った



なんか幸せな気持ちになった