泡沫の記憶


7時になって
閉館のチャイムが鳴った



オレはノートを閉じて鞄に入れた



書いてるようで何を書いてるのか
自分でもわからなかった



ふたりで無言で図書館から出た



外の空気が生温かかった



「「ごめん」」



ふたりの声が重なった



少し笑った



オレのごめんは

投げやりでごめん



咲田は?

謝る必要ない



「変なこと相談して、ごめん」



咲田が言った



「いや、別に…
オレの方こそ、なんかごめん」



瀬倉に?って聞きたかった


けど、こわかった



「告白って…誰に?」



オレは勇気を出して聞いた



「…先輩」



「え?」



瀬倉の名前が出なくて驚いた


少し安心した自分もいた



「…澤田先輩」



あー、3年の



「え、で、返事したの?」



「とりあえず
ありがとうございますって言ったけど
部活で会うから、気まずいよね?」



「…うん
咲田、付き合う気、あるの?」



「澤田先輩、かっこいいし
すごく優しくていい先輩だけど
そんなこと全然考えてなかったから
びっくりした…」



確かにカッコイイ



咲田と澤田先輩が
手を繋いでるところを思い浮かべた


虚しくなった

お似合いだね



オレは言葉に詰まった



「体育祭とかイベントのあとって
ノリで誰かに告白しようとかあるよね
とりあえず明日からテスト前で部活ないから
その間に考える…」



咲田が言った


考える…



「考えて、付き合う場合もあるの?」



さっき、つきあえば…って
投げやりで返事したのに
オレ、なんなの?


自分でもわからない



「んー、わかんない…」



咲田は困ってた



「…ごめん、なんか相談にならなくて…」



「そんなことないよ
さっき、付き合えばって推してくれたじゃん」



や、アレは、推したわけじゃないけど…



「別に…そんなんで…
そんなんで、付き合うなよ!」



言葉が強くなった


咲田がオレを見た



「あ…ごめん」



オレ、焦ってる


たぶん
咲田に付き合ってほしくない



「んーん…ちゃんと考えるね

とりあえず、明日からまた
図書館一緒に行ってもいい?」



「うん…」



複雑な気持ちだった