泡沫の記憶


電車から下りて駅から出ると



「小栗〜」



後ろから声がした

そぉ、咲田の



オレは振り向いた



「電車にいないから、
今日来ないのかと思った」



少し息を切らせて、咲田が言った



遅れて瀬倉が振り向いた



「アレ!瀬倉!」



「え!咲田?
髪、切ったのか!
咲田だって気付かなかった」



「うん…」



咲田は少し恥ずかしそうに
瀬倉から目をそらした



「…いいじゃん!
似合ってる」



「…うん、ありがと…
でも、また伸ばすの!」



「なんで?…似合ってるのに?」



ふたりのやりとりに少し嫉妬した

オレは黙って聞いていた

たぶんふたりが話すだけでイライラする



「うん…なんとなく…」



「咲田、元気そうでよかった…」



「うん、元気だよ!」



咲田は無理に笑顔を作ってるように見えた



「またみんなで会いたいね
みんな元気かな?」



瀬倉はオレに話を振った



「…え、みんなって?
中学の?」



「うん」



「夏休みとかみんなで集まれるといいね」



オレは言った



「うん」



咲田が頷いた



瀬倉にとって咲田は
みんなの中のひとりであって
特別なひとりではないのかな…



オレが咲田に特別な感情を抱いてることが
みんなにバレたら…



やっぱりこの気持ちは
伝えたらダメなのかもしれない



楽しかったあの頃

オレはみんなの笑顔を思い出した