泡沫の記憶


「そっか…
よかったな」



「よかったのかな?」



「ん?なんで?」



「私の好きだった人ね…


好きだった人ね…

結婚するって…


前から付き合ってた人と
結婚するって…

私の方が
先に知ってたのに…

私の方が
先に好きになったのに…

私の方が
一緒にいた時間は長かったのに…

私の方が
絶対好きだったのに…

私の方が…」



涙が溢れた



ホントは諦めてなんかなかったんだ


自分でも気付かなかった気持ち



「キミさぁ…
まだそんなこと言ってんの?

だから…
選ぶのは相手だから…

キミは選ばれなかったんだよ

キミの叔父さんは
キミと婚約者どっちの方を愛してたかとか
そんなのはわらかないけど…

きっと叔父さんも辛かったんじゃないかな…

キミを選べなかったこと

選べない理由があったこと

キミを離さなければならなかったこと


でも今彼は
奥さんになる人を
愛してるんだよ


ハイ!終わり!
ずっと考えてても仕方ないだろ
人生終わるぞ!」



オジサンは泣いてる私の頭を
またクシャクシャって撫でた



それから
今日はティッシュじゃなくて
抱きしめてくれた



「オジサン…
いいの…?
Yシャツ、汚れちゃうよ…
グシャグシャになっちゃう…」



「クリーニング出しといて…」



「うん…
ありがと…オジサン…」



「ちゃんと結婚式行ってあげな

きっとキミの叔父さん喜ぶよ

それで
奥さんいる前で
まだ好きです!って
言ってやれよ

まぁ、それでも選ばれないだろうけど…」



オジサンは笑った



きっと私を笑わせるために



オジサンは

今日も優しかった