泡沫の記憶


2年前の夏



高校生になった朱夏



「京ちゃん!」



あんなに小さかった朱夏が

少し大人に見えた



「今、学校の帰り?」



「うん、明日から夏休み!」



「学生はいいな…
オレもまた学生に戻りたいな」



「宿題もあるしテストもあるよ」



「それはヤダけど…
大人になると
もっと大変なこともあるからさ

高校の時が1番楽しかったな…」



「京ちゃん、彼女いたもんね」



「朱夏、よく憶えてるね」



「うん、一緒に公園行ったよね」



「あー…行ったね
朱夏が水飲み場の蛇口ひねって
服バシャバシャにして
帰って怒られたよね
オレが…」



「うん、京ちゃん私の代わりに怒られてくれた
京ちゃん優しいもん」



「優しいかな…?」



「うん、優しいよ
私の言うこと、なんでも聞いてくれる」



「朱夏のこと甘やかすな!って
それもよく怒られてたけどね

兄ちゃんがオレに優しくしてくれたみたいに
朱夏のこと妹みたいにかわいくてさ
つい朱夏には甘くなっちゃう」



「彼女より…?
あの時の彼女よりかわいかった?」



「え…」



「京ちゃん、公園で彼女とキスしてたよね?
なのに、私にはしてくれなかったよ」



「見てたの?朱夏」



「うん…
だから、わざと服濡らした

京ちゃんが私のこと見てないから…
京ちゃんが心配してくれると思ったから…」



「朱夏…」



「私も高校生なったから
彼氏できるかな?
キスしたりするのかな?」



「…」



オレは
なにも答えられなかった



「あ、私に彼氏ができても
お父さんとお母さんには内緒ね!」



かわいがってた朱夏が
キスするの


想像したくなかった