──唇に触れる、ぬくもりと柔らかさ。

 それを感じたのはほんの数秒で、唇が離れると同時に瞼を開く。瞳に映るのは、伏し目がちな色気を放つ表情の彼。

 初めてのキスは、想像していた恐怖や不快さはまったく抱かなかった。むしろ、愛しさがどんどん湧いてくる。

 先生となら、この先に進めるかもしれない。その期待を抱いているうちに再び唇が寄せられ、さっきよりは力を抜いて瞼を閉じた。

 今度のキスはやや長く、呼吸の仕方がわからなくて若干苦しくなる。先生はそれもお見通しのようで、時々唇を離して私に酸素を与えては、角度を変えてまた口づける。

 そのうち私は、唇から溶かされて交じり合ってしまいそうな、淫らで甘い不思議な感覚を覚えていた。身体が熱く、心臓も激しく動いて壊れそう。

 初めてのキスに翻弄され、頭がぼうっとしてきたときだ。

 先生の手が腰から上へと滑らされた瞬間、突然過去の記憶がフラッシュバックする。

 別の人の手が触れている錯覚を抱き、身体が勝手に反応して彼の胸を押し返していた。