翌日も、朝はひとりで朝食をとって出勤し、誰もいない部屋に帰宅した。これまでひとり暮らしもした経験がないので不思議な気分だが、ある意味新鮮だ。
当直医は翌日の夕方まで働くため、つくづく大変な職業だと思う。今夜は元気が出る料理をたくさん用意しようと、休憩中に考えた献立を作っていく。
今日は図書室にも来なかったし、先生の顔をまったく見ていない。……早く会いたい。
胸は焦がしても肉は焦がさないぞ、とつまらないことを心の中で呟いて、定番の豚キムチを調理していたときだ。
鍵とドアが開く音で彼が帰ってきたと気づき、私は主人を待っていた飼い犬さながらに喜びを露わにして玄関へ向かう。
仮眠中についたのか、それとも手術帽を被っていたせいなのか、毛先がぴょんと跳ねたままの彼を見て笑みがこぼれた。まだ照れる挨拶も自然に口から出てくる。
「おかえりなさい……!」
「ただいま」
先生も私と目を合わせて表情を緩めた。そして、大きな手を私の頭にぽんと乗せる。これまたご主人様に撫でられるペットの気分だ。
「いいな、こうやって伊吹が迎えてくれるの。すごくホッとする」



