──三日後、お互いに仕事が終わったあと約束通り区役所に向かった。
この日に入籍したいと話したとき、母はともかく父はとても動揺して、大地にも『早すぎる』と散々文句を言われた。しかし、再びわが家に足を運んでくれた先生の説得の甲斐もあり、なんとか許してもらえたのである。
時間外窓口に婚姻届を提出すると、噂に聞いていた通り『おめでとうございます』の言葉をもらった。意外とあっさりしたもので、正直まったく実感はないけれど……。
浜菜伊吹、ついに明神伊吹となりました。
先生の誕生日のお祝いは入籍だけではやっぱり足りない気がして、ほんの気持ちだがノック式の万年筆をプレゼントした。あまり感情を表さない彼も喜んでいたのはわかったので、ホッとしている。
職場には、事前に明神先生と一緒に病院内を回り、同僚の先生方や院長に結婚する旨を報告してある。皆『あの女性に興味なさそうだった明神先生が!?』と、驚愕しながらも祝福してくれた。
そしてこの話は、図書室にやってくる子供たちにも知らぬ間に伝わっていたのである。



